MotoGPにおけるライディングテクニックの進化

ケニー・ロバーツ

ケニー・ロバーツは1970年代後半に登場したゲームチェンジャーの一人だ。
当時はましんに負担をかけない直線的なライディングスタイルが一般的だったのだが、これは500㏄クラスのマシン性能の限界が低かったせいで2ストロークエンジンから繰り出される強大なパワーが当時の車体やタイヤの性能をはるかに上回っていたせいである。

ケニーロバーツはこの車体とタイヤの弱点を突破し、優れたスロットルコントロールでグリップの限界のさらに上までプッシュすることを可能にしたのだ。
ケニー・ロバーツは粉内側に大きくハングオフし膝を路面に擦り付けながらコーナリングの限界を探り続けていたのだから驚きだ。
この1970年代に新たな歴史が生まれたのである。
その後の1980年代初頭にロバーツを超えようとライダーたちさらに磨きをかけていったのだ。

ヴァレンティーノ・ロッシ

2000シーズンにはヴァレンティーノ・ロッシが登場した。
ヴァレンティーノ・ロッシはその才能の高さを見せつけ、周囲の進歩にいち早く適用しつつ限界をさらに超えていった。
各クラスのレースを次々に制覇するのと同じころ、MotoGPレギュレーションの制定により、4ストロークエンジンが主流となってマシンの性能は劇的に上がったのだ。
どんなライディングスタイルが効果的なのか未知数であってにも関わらず、ヴァレンティーノ・ロッシはグリップを重視したコーナリング、タイヤをスライドさせるコーナリングと使い分け、さまざまなスタイルを統合していき、周囲を感動させた。

これによりライディングスタイルにおける基準が劇的に引き上げられたのは言うまでもない。
ヴァレンティーノ・ロッシのスタイルを引き継ぎ、そのさらに上を目指すライダーが瞬く間に増えていったのだった。

マルク・マルケス

現代における最大のゲームチェンジャーとしてマルク・マルケスが存在する。
驚異的なタイヤグリップを最大限に活用し、今もなおその限界に挑んでいるのだ。
フロントエンドのスライドは旧来型のライディングスタイルのライダーにとってはクラッシュを意味するが、マルク・マルケスはその絶妙なバランス感覚とチャレンジ精神、そしてなによりも大きい自信で勝利を勝ち取ったのだ。

GP最高峰クラス参戦1年目でチャンピオン獲得というのは、1970年代のケニー・ロバーツ以来となる。
だがこれは完成形ではく、さらに高性能なバイクを開発し、ゲームチェンジャーたちのスタイルを参考にまだまだ進化を続けている。

進化するライディングテクニック

ゲームチェンジャーたちがもたらしたライディングスタイルの進化は、今もなお完成していない。
ゲームチェンジャーたちはマシンと自分の限界に挑み続け、常に上を目指している。
そしてそれはマシンを開発しているメーカーだって同じことだ。
これから新たなゲームチェンジャーが登場したとき、どんなライディングスタイルを披露してくれるのか見ものである。